六課部隊長室、エスティマはコーヒーを飲みながら抜け殻のようになっていた。その理由は至極簡単だ。
調査という名目でとある企業にお話を聞きに言った結果不正が発覚、それを芋づる式に引っ張り出してみるとあら不思議、
スカリエッティの名前がでてきました。さらに企業をつっついてみると真っ黒々な局の人達の名前まで
出てきました。
一気呵成の勢いで仕事を進めたらスカリエッティのラボは発覚した上、戦闘機人の詳細なデータまでゲット。
こりゃー攻めるしかねぇーとか勢いづいて攻勢をかけたらあっという間にスカさんを逮捕。現在に至る。
尚機人も全て投降するという形で終局を迎えてしまい万々歳な結果になってしまった。
被害も無しの上迅速な成果をあげたことで評価も上々。嬉しいなといった所だが。
……あまりにも歴史とは違った形での終焉に拍子抜け、といったところだろうか。姿勢を正してコーヒーの湯気を飛ばす。
一応、六課は続くことになった。敵を叩きましたはいバンザイ解散です!という訳にもいかないので、
今後はロストロギアの回収だったり、他所の手伝いだったりを色々する事になるだろう。新人の教導も変わらず。
少しはクーパーに関する調査もしてやれるかな、と頭の片隅では考えていた。
陸と海の折り合いをつける為に色々動くかもしれないし仕事は無くならないだろう。中将も健在な事だし。そう、そう。
ゆりかごは飛立つ事無く未だミッドのスカラボ近くで眠っている。現在陸と海が協議中……との事だがどうなることやら。
それはエスティマの知る所ではない。熱いコーヒーに口付けながら俺も教導に加りたいなぁ、などとほのぼの考えていると
部屋にはやてが入ってきた。
「エスティマ君ちょぉ失礼、ってどしたのその顔は」
「結社壊滅記念顔」
「なんよそれ。はいこれユーノ君からの資料」
相槌を打ちながら受け取る。もうスクライアも無限書庫で資料を漁る必要もなくなったわけで何かのメッセージだろうか。
重要でない書類の端に無理し過ぎない程度に頑張ってね。と書かれていた。
死ぬな馬鹿とでかでかと白紙の紙に書いてきたのは考えるまでも無くアルフだろう。成長性というか変化がない。
そして、でかでかと書かれたアルフの隅っこにお疲れ様です。と走り書きがあった。クーパーだろうか。多分そうだ。
「でも本当に呆気なかったねぇ、拍子抜けっていうか……」
「実は本当のボスは俺だ! みたいなのが出てこない事を祈るよ。平和が一番だし」
「ほんまやわ」
エスティマはコーヒーを置いて書類を眺めていたのだが、その卓上に置かれたカップにはやてが一口頂戴と手を伸ばし口付ける。
間接キスやわーと胸の中では天使がふわふわ飛んでいたりするのだが、コーヒーはやはり苦かった。現実はそう甘くない。
「よくエスティマ君はブラック飲めるなぁ」
「大人の味大人の味。はい、はやても仕事仕事……っと」
ユーノからの書類をまとめつつ、コーヒーを返してもらい口付ける。少し悔しくて解ってたけど言ってみた。
「そんな間接キスしたかったん?」
「……は?」
「冗談や、それじゃ私も戻るから」
「あ、うん」
はやては部隊長室を去っていった。残されたエスティマはコーヒーが入るカップを見てから、もう一度口付けた。
生憎と、はやての味はしない。ただのブラックの味がした。当然だが、スカリエッティ逮捕及び結社の崩壊は誰もが知っているが
3脳については知る者は少ない。というよりも、エスティマと陸、海の一部の人間以外知らないだろう。
芋づる式で引っ張り上げた結果管理局の黒い部分まで大きく露出し、すべてを公表するにはあまりにも問題があると判断。
司法に委ねず闇に葬る事を決定する。所詮は組織なのだろうか。