耳が痒く身体がこそばゆい。
長く垂れた髪が今だけは鬱陶しかった。
頭を掻く。
吐息を落とす。
狭い部屋に閉じこもり、自分と向き合い続けて少しは解った気がした。
何を思い、何を考え、どうしたいのか。
その答えは酷くシンプルで迷いが無い。
なるほど!と思う自分が浅ましくも素直だった。
くそくらえだという事だ。
胸元で揺れる相棒(仮)にはこんなことは言えない。
舌をなめずる。

個はそれぞれ。
人は群れて社会を作る。
笑顔であれば万歳。
自分の何かを覆い隠しひくつきそうになる口許を手で覆い隠す。
子のものざねは母と父。
その手塩による。
腐れども外道されど立派に育つ子もあれば。
立派る親許で腐る子もいる。
さても、
さても。

本質は獣であった。
戦いに興を見出し喜悦を覚える。
口が裂けても言えぬ己の本質。
死ぬまで自問自答して意気消沈しては隆起し続ける。

1人になればなるほどむずがゆかった。
暴れたい感覚に満たされる。
誰かといると窮屈で仕方が無い。
息苦しく眩暈を覚える。
そうならないよう生き抜かねばならないのも処世術か。
他人の本質を知るものなぞどこにいるのか。
笑顔の裏で嘲笑い、鼻で笑う。
そういう意味ではクーパー・S・スクライアという人間はやりやすくて仕方が無かった。
付け入りやすいという意味だ。
友人としても。
なにもかも。

乱れそうになる呼吸を抑える。
平面たれ、平面たれと言葉を重ねる。
何を?というならばこう答えよう。
呪いだと。
足音が聞こえる。
いつもの監視官や食事の配膳ではない。
歩幅が違う。
首許で赤い玉が揺れていた。
映える金の髪を翻し、赤い眼差しが向けられる。
鈍った体には丁度いい。

「フェイト・テスタロッサさん」

見知った女が姿を見せた。
首を傾げる。

「何か、御用でしょうか」

 そこな女は正当でない。

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